大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2861号 判決

原判決挙示の各証拠を綜合すると、原判決摘示の第一事実(被告人両名が仲間数名と共に、多衆の威力を示して加藤竹平を脅迫し、同人に暴行を加えた事実)及び第二事実(被告人両名が原審相被告人平林実外数名と共謀の上、右加藤竹平の妻いそを脅迫して清酒一升入二本を喝取した事実)は優にこれを認めることができる。所論は結局独自の見解に立脚して、原審の証拠の採否、事実の認定を非難するに過ぎないものであつて、所論引用の証拠の中被告人らに有利な証拠もないではないが、右は原審が、原判決挙示の証拠に照らし、排斥したものであり、これを排斥したことについて、採証上実験則に違反し不合理であると認むべき点は何等発見されない。

又、被告人両名が原判示のように、被害者加藤竹平が、被告人幡野の大豆入リュックサック一個を持去つたとの疑念を抱く十分な根拠があり、現に右リュックサックは、被害者方附近で発見されたのであり、このような場合、被害者について事案の有無を問い、その返還を求めることは法の禁止するところではないが、社会通念上許された限度を超え、原判示のように、仲間数名と共に、被害者宅に行き、多衆の威力を示すと共に脅迫的言辞態度を示した上、暴行を加えることの許されないことは当然である。従つて、被害者から右リュックサックの返還を受ける権利があることから、本件行為が所謂自救行為として犯罪とならないということは到底できない(本件は、現行犯人の逮捕や現行犯人から盗品の取戻をする場合と全然異る場合であることは、記録上明らかである。)。さらに、原審が第二事実の証拠として引用した裁判官の証人加藤いそに対する尋問調書の記載はこれを採用して、第二事実を認定する証拠とすることは何等の妨げなきところである。この点に関する所論は、他の補強証拠がなければ、右の尋問調書の記載は証拠として採用できないという趣旨と解せられるが、原判決は第二事実を認定するについて、補強証拠として右尋問調書の記載ばかりでなく第二回公判調書中の証人加藤いその供述記載も挙示しているのであつて、しかも原審第二回調書中の同証人の供述記載(検察官の証人に対する酒とするめを買つて来いと言つたのは誰かとの問に対し、言つたことは事実ですが、私は今ここではつきりと言うことは出来ません、なぜなら、うわさに依りますと「闇の晩もあるぞ」ということを聞いて居り又その時来た人達が多数傍聴している中で言うのは気持が悪いからですと答えている)とを対照すると右尋問調書の記載は強い信憑力を有し、所論引用の反対証拠の信憑力を減少せしむるに十分である。

以上説明のとおり、原判決には証拠の採否、事実の認定に何等違法の点がないから、論旨は理由がない。

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